早きこと、風の如く。彼は正しく風のように、颯爽と去っていった…。

職場から!

僕は、ブラック企業入社2年で今の職場に転職しました。それでも十分「早いな」と思われるもんです。

親からも「決断早いな」と言われましたし、今の職場の人にも「早く決めてよかったよ」と言われます。

でも、僕よりもっと早くに転職した同僚がいたんです。彼は新卒1年目で転職していきました。

入社から1年経ってからではありませんよ?入社1年経たずして辞めたんです。そう、本当に風のような人でした――。

彼の名は。

彼と僕は、単なる同期の同僚です。広島生まれの広島育ち。生粋の瀬戸内人間な彼は、サバサバしている反面人情に厚い男でした。

サバサバとした態度を取っているのは、きっと人のことを本当に大切にできるからでしょう。

そして何より、ものすごくフットワークの軽い人でした。

大学時代には思いつきで雨の中バイクを飛ばして福岡を目指したり、急に「山に行きたい」と言って数日間山にこもったという逸話があります。

そんな足軽さを称えて、僕たち同期入社組は彼のことを「瀬戸内の足軽」と呼んでいます。

足が軽くてどこへでもすぐに飛んで行くから、足軽。足軽って、別に悪く言ってるわけじゃないんですよ。

武士的には雑用みたいな意味がありますが、現代においてはフットワークの軽い身軽な人をそう呼びたい!

決断した瀬戸内の足軽

身軽な逸話を色々残している瀬戸内の足軽ですが、彼はいつも唐突に何かをしでかす男らしいです。

僕らに「転職する」と言ったのも、本当に唐突でした。「あいつ辞めそうだな」という前触れすらなかったので、みんな驚いたもんですよ。

まあ、心のどこかでは納得してましたけどね。「彼ならそうだろう」と。

仕事に対して情熱的ではなく、仕事は仕事だと割り切って考えている人なので、いつの間にか転職を志していてもおかしくはなかったんですよ。

そして、普段の何気ない残業中に、いきなり言うんです。

「転職するから、よろしく」と。

イヤイヤイヤよろしくじゃねえよ!?

何をよろしくされるのか、よくわかりませんでした。何よりもそのときは、1年目で辞めていいのかという気持ちが大きかったです。

結局それから数ヵ月後に自分も転職活動するとはそのときの僕は知りませんから、「本当にそんなのできるの?」と疑問でした。何より、足軽は仕事の実力が中の中。平凡なんです。

色々疑問がありましたが、まず最初に理由を尋ねてみたんですよ。

「俺は、この職場に合わんと思うけぇ」って方言で言うんです。

続けて、「このままじゃいけん」と。合わない職場にい続けても、自分と会社両方のためにならないと言うんですよ。

僕は、このとき心の中で「瀬戸内の足軽じゃあ!」と手を叩きました。

このあだ名、このときに付いたんですよ。命名は僕です。あまり職場内では定着しませんでしたけどね。僕だけはしつこく「ああ、あの瀬戸内の足軽ね」と言ってました。

そして、結局彼は、そのまま会社を辞めて転職をしたんです。

カッコいいじゃないか

先輩方や上司たち、何よりお偉いさん方は「まったく、なっとらんな。骨がない」と言ってました。

それは上の人からすると、入社1年目でさっさと辞められたんでは面白くないでしょう。そうやって悪く思うのも、当然です。

上司たちは浸透していないあだ名を使って、「まったく足軽は」とヤユしたんですよ。

でも、僕は違います。

自分の思うさまに動けるというのは、わやカッコええ!

わやっていうのは、広島の言葉で「めちゃくちゃ」っていうことです。

彼をリスペクトするあまり、広島すらリスペクトしたくなってきます。あのあたたかみのある街が、瀬戸内の足軽という生き方を生んだんでしょうね。

フットワークの軽さは大事なステータス

彼の決断の早さを「慎重さに欠ける」とか「勝手すぎる」とか思う人が多いと思います。確かに、見方によってはそうかもしれません。

転職というのは大きなイベントだからもう少ししっかり考えて…と思うのは、当然のことです。

でも、僕はこうも思います。

決断の早さとフットワークの軽さは、大事なステータスだと。

瀬戸内の足軽の決断の早さは、ある意味でとてもストイックです。

自分のやるべきことや、やりたいことにとてもストイックで忠実なんだなと思います。「これをやろう!」と決断したら、もう後のことは考えない。

後のことを深く考えたとして、後先のことは誰にもわかりませんよね。未来は未定。

だから、それは考えずに自分のやりたいことや、やるべきことを思うさまに貫き通す。そこに障害があっても、怖気づくことはない。

だって、やりたいことをやれないのが一番怖いから。

雨の中バイクで福岡を目指したのも、そういった彼のストイックな考えがあったからでしょう。

そのストイックさを貫き通した結果、彼は実力が平凡でもホワイト企業に転職して給料もアップしたんだと思います。

もっと早くに…と後悔することがある

僕は、決断を少し鈍らせて思考が麻痺していたことがありました。

彼のように即座に決断して、それを実行できていればそうはならなかったでしょう。きっと、もっと早くに今のような良い職場で元気に働けていたはずです。

どうして「この職場はおかしい」と気づいたときに、決断できなかったのか。「辞めたい」と思ったときに「辞めよう」と思えなかったのか。

きっと、僕も現状を変えるのが怖かったんだと思います。

「転職したい」という気持ちがあっても、仕事を辞めた先のことがわからないから怖くて動けなかったんです。同じような人は、多いのでは?

でも、今となっては現状を変えるのが怖くて動けないなんて、アホみたいだなって思います。

先のことがわからないなんて当たり前じゃないか!

現状を維持しても、やりたいことを引っ込めても、それは同じ。それなら、自分のやりたいと思うこと、やるべきだと思うことを思うさまにやったらいい。

僕が転職を決意できたのは、先に彼がさっさと一人で転職をしてしまったからでしょうね。

僕は、社会人はもっと「足軽」になるべきだということを瀬戸内の足軽から教わりました。