通訳や翻訳の仕事って、外部の人間からするとなんとなく憧れがあるんですよね。

英語を日本語に訳して話をしたり、本を書いたりするイメージがあって、カッコイイと思います。

魅力的で知的でクールな仕事なんだなと思っているんですが、僕の知り合いに一人翻訳・通訳の仕事をしている人がいて、彼と話をする中でイメージが多少変わりました。

魅力的なだけではない、華々しいとは言えないような仕事でもあるんだと。

華々しいのはテレビに出たり、有名な本を訳したりしている有名翻訳家・通訳家であって、その他大勢の翻訳・通訳の仕事をしている人には、そのイメージは当てはまらないんだなと思いました。

だって、その知人がハチャメチャに愚痴ってたから。

もう辞めたいって、限界寸前だったから――。

翻訳土方?

システムエンジニアが、よく自分たちのことをIT土方と言っていますが、翻訳界隈で仕事をしている人も似たような言い方ができるかもしれません。僕の知人は、自分自身のことを「俺のレベルだと翻訳家ではなくて、翻訳土方だ」と表現していました。

面白い言い回しだなと感心したんですが、感心してる場合じゃないですよね。

知人によると、英語を使った雑用が多すぎて疲れるということです。その酷使のされ方から、翻訳土方と呼んだわけですね。

英語を使って仕事ができることは嬉しいけど、その仕事内容があまりに理想とかけ離れていた。知人の理想はみんながイメージする通り、洋書や英語の資料の翻訳。彼の仕事はビジネス翻訳ではあるものの、仕事で使う資料を日本語に訳すのは面白そうだなあと思っていたんだそうですよ。

ただ、現実は面白いことはなくて、英語を使った雑用だった。

取扱説明書をひたすら日本語に訳してエクセルシートに入力し、誰かが少しでも英語関係で困っていれば駆り出される毎日…。翻訳しながらエクセルに入力することや、次から次へと小さい仕事が舞い込んでくることは、右脳と左脳の両方を同時に酷使するようなもの。

それで、知人は集中することに疲れてしまったんですよね。

「集中して仕事をし、脳を酷使して疲れるわりに、俺の仕事はなんて小さいんだと絶望した」

彼は、そう語りました。

通訳の仕事、理想と現実のギャップ

翻訳だけでなく、通訳の仕事にも理想と現実とのギャップはありますよね。

通訳者は、話をしている本人になりきって話すと、ダメなんです。本人が言っていることを通訳しているのであって、それは自分の言葉ではないという謙虚な姿勢が大事。ただ、通訳者が本人の語り草の熱量とかけ離れすぎても仕事にならないのではないだろうかと思ったりもしますよね。

たとえば、英語で「この商品イイヨ!」とオススメする外国人の通訳をしたとしましょう。

自分自身がその商品を売るという気持ちに全くならなかったら、通訳をしたところで相手にあまり伝わりません。通訳者を介して話をすると、本人の熱量が薄れるんですよね。だから、少しは熱がないといけないかもしれない。

それが、通訳の仕事を始める前に思い描きがちな、理想の通訳の仕事

通訳者本人がある程度の熱量を持って言葉を振るいながら、謙虚な姿勢を崩さない。その中間の難しい立ち居地を探るというのが、一種の理想なわけですよ。

だけど、通訳者はその人じゃない。

通訳者は自分自身の存在をできるだけ消して、透明じゃないといけないんです。「あれ、今日通訳いなかったっけ?」と思われるくらい透明人間に徹さないといけない。自分自身は人ではなく、言葉なんだと思うくらいがちょうどいいんですよね。

華々しいようで、実は透明人間

それが通訳者の、一種の現実です。その理想と現実のギャップから辞める人がとても多いですし、ギャップに苦しんでいるわけでなくても「透明でいること」に疲れたという人も多いんですよね。

通訳と翻訳共通の悩み

通訳と翻訳の仕事をしている人の共通の悩みと言えば何かを、知人に聞いてみました。

  • 翻訳はあっても、通訳の仕事がない
  • 専門性の高い単語がわからない
  • クレームが多くて凹む
  • 組んだパートナーとの関係が、うまくいかなかった
  • 俺って才能ないんじゃね?
  • 通訳・翻訳関係、正社員少なすぎィ!
  • 報酬レート上がんねえなあ
  • この仕事、いつまで続けられるかなあ
  • 仕事内容飛躍しすぎ問題

通訳や翻訳をしていると、専門性の高い単語にたくさん出会います。たとえば、海外向けのゲーム発表会「E3」というものがあるんですが、その際の翻訳者がほぼ毎回叩かれるんですよ。ゲーム関係の知識が無いと、うまく訳せない部分が多くて、「そこ違うだろ」と言われるわけです。

叩かれるまでもなく、自分自身が一番よくわかってるんですよ。専門的な単語がわからなくて辛いとか、ここは違ったかなとか、通訳者自身が一番理解しているんです。

ただ、そういうことがあると「俺は才能が無いのかもしれない」と思って精神的に病んでしまう人も、たくさんいます。報酬レートが上がらなかったら、なおのこと凹むんです。クレームもバシバシくるし、なんか色々と大変ですよね。

また、ビジネス翻訳では仕事内容が飛躍しがちです。

マニュアル翻訳の仕事なのに、マニュアル作りをさせられた!!

そういうことが、多発しています。そりゃあ、辞めたくもなるわな。

不安なのが、転職できるのかということ

通訳や翻訳の仕事をしている人の多くが不安がっているのが、「転職なんてできるの?」ということです。最初から諦めモードで「転職なんてできないでしょ」と思っている人も、多い。知人も最初は諦めモードでしたよ。

確かに、通訳や翻訳の経験をそのまま仕事にしようと思ったら、転職は厳しいでしょうね。

ただ、通訳や翻訳をするにあたって使っていた知識や、得た経験の一部を利用して異業種に転職するというのなら、どうでしょう。英語スキルだけを活かしたり、コミュニケーション能力や事務能力だけを活かしたりするなら、出来る気がしませんか?

そうやって知識や経験の一部を活かしながら、極力悩みを解決できる仕事を知人と一緒に考えてみました!

  • 貿易事務
  • 英語教室
  • 翻訳コーディネーター
  • 輸入販売
  • 旅行関係の仕事
  • マーケティング
  • 一般事務
  • ライター

思い浮かんだものの一部を挙げても、これだけあるんですよ!

貿易事務で英語力と事務力を活かすのもアリだし、英語力を活かして英語教室で働くのも良いでしょう。ハードルは高いですが、英語教室を開くという人も案外います。

翻訳をする側ではなく、依頼を受けて納品からアフターフォローまでサポートする翻訳コーディネーターに回るのも面白いかもしれません。自分で翻訳するのでなく、翻訳家とクライアントとの橋渡しですから、編集者やディレクターに近いですよね。

また、旅行関係でも英語力を生かせるでしょうし、輸入販売も面白そう。ライターなんかもいいと思います。

通訳や翻訳から直接繋がるキャリアではないかもしれませんし、知識経験を活かせるだけで一旦キャリアは途切れることになるかもしれません。それでも、これだけ大変な仕事をしてきたんです。有利になる転職先は、案外色々あるものですよ。

通訳・翻訳から異業種への転職をするには、これが大事。

間接的にでも、知識・経験を活かせる仕事を探せ!