「仕事辞めてえなぁ」

そう思ってから最初にとる行動って、個性が出ると思うんですよ。

早速求人を漁る人もいれば、求人は最後のほうに少し見るだけで最初は全然違うことをする人もいるでしょう。

僕は、どちらかといえば後者でした。

すぐ辞めるわけでもなく、求人を見たりするわけでもなく…

じゃあどうしたんだって話ですよね。それをこれからお話します。

嘘をついて有給を取りました。

仕事を辞めたいと思ったとき、「じゃあ、辞めたくならないような仕事の条件ってなんだろう」と考えました。

考えた結果、その条件のひとつに「自分の時間があること」が浮かんだんです。他の条件は給料とか、そういう待遇面でした。

次に考えたのが、「その環境を体験してみよう」ということです。

給料は転職前にどうすることもできなかったので、自分の時間があるという状況を作ろうと思い立ちました。

まず、上司に「遠縁の親戚の葬式でして」と嘘をつきます。

普段取れない有給を無理やり取得して、数日間のまとまった休みをゲット。これで自分の時間が作れました。

さあ、自分の時間が出来た。何をしよう。一日中本を読むというのもいいけど、なんかつまらない。ゲームをするというのもありきたり…。

そうだ、京都に行こう。

そういうことで、僕は京都への一人旅に乗り出しました。

どうして京都だったのかというと、ゆったりした時間が流れていそうだったからです。

あと、某CMのように、ノリで「そうだ京都、行こう」と言ったら妙に現実味が出てきたんですよ。

東京から遠いということもあって、心機一転するのにちょうどいいなというのも理由です。

まあ、それは後付けなんですけどね。

観光地、半裸のオヤジ、夜の歓楽街

京都の旅は、とても新鮮でした。

街中に関西弁が飛び交っているのに、たまに中国語や韓国語、そして英語も聞こえてくる。どこに行っても修学旅行生らしき子たちがいて、町全体が観光スポットのようでした。

最初に行ったのは、ずっと行ってみたかった糺の森です。

神社の参道が原生林というのは、とても珍しいそうですよ。ものすごく涼しく、夏と秋には古本市が開かれたり、夏に御手洗祭りというお祭りがあったりと賑わうとのこと。

近くの鴨川には大学生がたむろしていました。「そうか、ここは学生のたまり場なのか」と思いながら鴨川沿いを眺めていると、目の前に驚きの光景が!

半裸のオヤジが走ってる!?

ちなみに、京都では半裸のおじさんがランニングするのが日常茶飯事らしいです。

そんな驚きがあったかと思いきや付近には商店街やダイソー、スーパーがある。当たり前のことですが、「京都にもスーパーがあるんだな」と思ったのを覚えています。中に入ると、普通のスーパーでした。

観光スポットを巡って、豆もちを食べたりして1日過ごしていたら夜になり、宿のある河原町へと向かいました。

驚いたのが、河原町界隈に歓楽街があるということです。

河原町とか四条とか聞くと、やっぱり祇園のイメージでした。

「祇園精舎の鐘の声…と、侘び寂びに満ち満ちていて、厳かな雰囲気があるのではないか」という期待を胸に向かうと、そこには夜の街が!

飲み屋と大人のお店が並んでいて、「京都にもこういうところがあるのか」と驚きましたね。

京都とは、こんな奇怪な面白い町だったのか!もっと早く来ればよかったなあと思いましたが、そんな時間なんて無かったんですよね。

この先、自分が見ることができる世界について考えた

京都への旅での一番の収穫は、いろんなことを考え・知れたことです。

京都というメジャーな町のことですら、僕は何も知りませんでした。知っていたのは、日本の風情と情緒がある古都という、観光客向けの顔だけ。

夜の街があったことや、そこで暮らす人々がどのような生活をしているのかなどは、知りもしませんでした。

僕には、まだまだ知らないことがたくさんある。今の生活を続けていたら、到底それらを知ることはできない。

そういった考えが、頭をグルグル巡ったんです。

それに気づかせてくれたのは、京都のとあるバーのマスターでした。

夜の街があったのかと驚いた僕は、その新鮮な驚きをそのままに一軒のバーに入りました。大人のお店のテナントも入っている雑居ビルの4階に、そのバーはあります。

京都で暮らす常連さんが多いバーでしたが、一見の僕もすぐに馴染むことができました。

観光客が来るのが珍しいらしく、たくさんの話を聞かせてくれましたし、僕もたくさん自分の話をしました。

僕が会社の話をすると、マスターが言ったんですよ。

「会社は社会の一部で、社会の全てじゃない。君は若いんだから、もっといろんなことを知ったほうがいいよ。辞めたいなら辞めて、新しい社会を見て勉強するのがいいと思う。仕事も社会もひとつじゃないからね」

社会は、ひとつじゃない。

観光地としての京都の顔と、住民にとっての京都の顔の二つの顔を見てきた僕に、その言葉はとても心地よく響きました。

京都の顔がひとつじゃないように、はたまた日本に47都道府県があるように、いくつもの会社があるように、社会はたくさんあるんだ。

今思えば当たり前のことなんですけど、それにすら気づけなかったんですよね。

転職活動、始めました。

バーで飲んで宿に泊まって、それからもう一日京都を見て回りました。狭い京都でもいろんな社会があることを学んで、東京の家に帰宅。

有給休暇もその日で終わり。明日からまた出社しなければならないという、普段なら嫌な気持ちになっていた休み明け前の夜、僕は清清しい気持ちでいっぱいでした。

新しい社会を見るという目標ができ、「辞めたいな」という少し漠然とした想いが「自分の時間を持てる職場に転職するぞ」という明確な決意に変わったんです。

とりあえず、転職エージェントに登録してみたり、年間休日数や有休取得率について調べてみたり。

京都から帰ってきたその夜から、僕は転職活動を始めました。